腱鞘炎は、手や指を酷使することで起こりやすいですが、発生する部位や原因によっていくつかの種類があり、それぞれ特徴的な症状が現れます。代表的な腱鞘炎の種類と、その症状に応じた診療科について理解しておきましょう。まず、最もよく知られているのが「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」です。これは、手首の親指側にある短母指伸筋腱と長母指外転筋腱という二つの腱と、それらを覆う腱鞘が炎症を起こすものです。主な症状は、手首の親指側の痛みや腫れで、物をつかんだり、手首を小指側に曲げたり(フィンケルシュタインテストで誘発される)すると痛みが強くなります。育児中の母親や、パソコン作業などで親指をよく使う人に起こりやすいと言われています。次に、「ばね指(弾発指)」です。これは、指の付け根の手のひら側にある腱鞘が炎症を起こし、腱がスムーズに動かなくなることで、指を曲げ伸ばしする際に、カクンと引っかかるような動き(ばね現象)や、痛み、腫れが生じるものです。朝方に症状が強く出やすく、進行すると指が曲がったまま伸びなくなったり、伸ばしたまま曲がらなくなったりすることもあります。どの指にも起こり得ますが、親指、中指、薬指に多いとされています。また、「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」、いわゆる「テニス肘」や、「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」、いわゆる「ゴルフ肘」も、肘の腱付着部の炎症であり、広い意味では腱鞘炎の類縁疾患と考えられます。手首を反らせたり、物を持ち上げたりする動作で肘の外側や内側に痛みが生じます。これらの腱鞘炎が疑われる場合、主な受診先は整形外科です。整形外科医は、これらの疾患の診断と治療(保存療法から手術療法まで)を専門としています。ただし、関節リウマチなどの全身性の炎症性疾患が原因で腱鞘炎が起こっている場合は、リウマチ科や内科との連携が必要になることもあります。また、症状が軽微で、まずは相談したいという場合は、かかりつけ医に相談するのも良いでしょう。