百日咳は感染力が非常に強く、特に家庭内のように密接な接触がある環境では、感染が広がりやすい病気です。大人が百日咳にかかった場合、免疫がまだ十分でない乳幼児や、ワクチンの効果が減弱している他の家族にうつしてしまうリスクがあるため、注意が必要です。特に、生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、百日咳に対する免疫が母親からもらったものだけ(それも時間とともに減少します)か、あるいはワクチン接種がまだ完了していないため、百日咳にかかると重症化しやすく、無呼吸発作や肺炎、脳症といった命に関わる合併症を引き起こす危険性があります。そのため、大人が百日咳と診断された場合、あるいは百日咳が強く疑われる場合は、家庭内での感染拡大を防ぐための対策を徹底することが非常に重要になります。まず、感染者はできるだけ他の家族、特に乳幼児との接触を避けるようにしましょう。寝室を分けたり、食事の時間をずらしたりといった工夫も有効です。咳やくしゃみをする際には、必ずティッシュやマスクで口や鼻を覆い、飛沫が飛び散らないように注意します(咳エチケット)。使用したティッシュはすぐに蓋付きのゴミ箱に捨て、その後は必ず手洗いをしましょう。マスクは、感染者だけでなく、同居する家族も着用するのが望ましいです。手洗いとうがいも、感染予防の基本です。石鹸と流水で、指の間や手首まで丁寧に洗い、アルコール消毒も併用すると効果的です。ドアノブや手すり、電気のスイッチ、リモコンなど、家族がよく触れる場所は、こまめに消毒用アルコールなどで拭き取りましょう。また、室内の換気を定期的に行い、空気を入れ替えることも大切です。もし、家庭内に生後間もない赤ちゃんや、免疫力が低下している方がいる場合は、医師に相談し、予防的に抗菌薬を服用する(曝露後予防投与)という選択肢も検討されることがあります。家族全員で感染予防の意識を高め、協力して対策に取り組むことが、家庭内感染のリスクを最小限に抑えるために不可欠です。