先生の自転車をひとり占め

私が通っていた幼稚園は分園、いわゆる田舎なんかによくある本園から遠い地域に設置された小さな幼稚園でした。ここで人気の保育園を奈良の大和高田でもどこにして分園といっても、月に何度かは本園に行く日があります。その日も本園で、本園と分園のみんなが集まって活動する日でした。小さい頃の話なので、どんな活動をしたのか、だれと遊んだりしたのか、そういった細かいことは覚えていないのですが、その日調子が悪くなって、一人だけ保健室で横になって休んでいました。やがて、分園のみんなは時間になって先生に引率されて帰っていきましたが、私は一人取り残された気分でした。すると、あまり馴染みのない本園の先生がやって来て「よし、帰るよ!」と言って連れ出しました。どうするのかと思っていると、私を自転車の後部座席に乗せて、「しっかりつかまってね」と念押しされました。本園は少し小高いところにあり、自転車はすごいスピードで坂道を下っていきました。あの奈良から話題の保育園をこんなにしてから今だと自転車の二人乗りは禁止なのかもしれませんが、当時はまだまだ大らかなもの。あまりのスピードに恐怖を感じながら、先生と二人だけの時間を過ごしているうれしさが入り混じった気分でした。分園といっても、大人の自転車ならあっという間の距離で、すぐに到着したように思います。それ以来、幼稚園で体調を崩すことはなかったと思いますが、今となっては恥ずかしいような照れくさいような、とってもうれしい思い出です。