メニエール病は、内耳の異常によって引き起こされる疾患で、いくつかの特徴的な症状が繰り返し起こることが診断の重要なポイントとなります。主な症状とその特徴を理解しておきましょう。まず、最も代表的でつらい症状が「回転性めまい」です。自分自身や周囲がグルグルと激しく回転するような感覚で、突然発症し、数十分から数時間、長い場合は半日以上続くことがあります。めまい発作中は、強い吐き気や嘔吐、冷や汗、顔面蒼白、動悸などを伴うことが多く、立っていることも座っていることも困難になります。めまいがおさまった後も、しばらくはフワフワとした浮動感や体の不安定感が残ることがあります。次に、「難聴」です。メニエール病の難聴は、初期には主に低い音（低音域）が聞こえにくくなるのが特徴で、めまい発作と連動して聴力が良くなったり悪くなったりする「聴力変動」が見られることがあります。発作を繰り返すうちに、徐々に難聴が進行し、高音域にも影響が及んだり、聴力が固定化してしまったりすることもあります。片側の耳だけに起こることが多いですが、両側の耳に起こることもあります。そして、「耳鳴り」も主要な症状の一つです。低い音（「ボー」「ゴー」といった音）の耳鳴りが、めまい発作の前や発作中に現れたり、持続したりします。難聴の程度と関連して、耳鳴りの音量や音質が変化することもあります。最後に、「耳閉感（じへいかん）」です。耳が詰まったような、あるいは圧迫されるような不快な感覚で、水の中にいるような感じと表現されることもあります。これも、めまい発作と連動して現れたり、持続したりします。これらの四つの主要症状（回転性めまい、難聴、耳鳴り、耳閉感）が、セットで、あるいは時間差で繰り返し起こるのが、メニエール病の典型的な経過です。ただし、初期には全ての症状が揃わないこともあります（例えば、めまいだけを繰り返す「めまい型メニエール」や、難聴・耳鳴りだけが変動する「蝸牛型メニエール」など）。症状の現れ方には個人差があるため、自己判断せずに専門医の診察を受けることが重要です。