捻挫が疑われる場合、医療機関(主に整形外科)ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医師による詳しい問診が行われます。いつ、どこで、どのようにケガをしたのか(受傷機転)、ケガをした瞬間に何か音がしたか(ブチッという断裂音など)、現在の症状(痛み、腫れ、内出血、動かしにくさ、体重をかけられるかなど)、過去に同じ場所をケガしたことがあるか、スポーツ歴、既往歴などを詳しく聞かれます。この問診は、損傷の程度や種類を推測する上で非常に重要な情報となります。次に、身体診察です。医師は、患部の視診(腫れや内出血の範囲、変形の有無など)と触診(圧痛の部位や程度、熱感の有無など)を行います。そして、関節の可動域(動かせる範囲)を調べたり、靭帯の緩みや不安定性を評価するための徒手検査(ストレスX線撮影の前段階として、手で関節にストレスをかけて不安定性をみる検査など)を行います。これらの診察所見から、捻挫である可能性が高いと判断された場合、さらに骨折や脱臼といった他の重篤な外傷を除外するために、レントゲン(X線)検査が行われるのが一般的です。レントゲン検査では、骨に異常がないかを確認します。通常のレントゲン検査では靭帯そのものは写りませんが、靭帯が付着している部分の骨が剥がれていないか(剥離骨折)などを確認することができます。また、必要に応じて、関節にストレスをかけた状態でレントゲン撮影を行う「ストレスX線撮影」を行い、靭帯の損傷による関節の不安定性を評価することもあります。靭帯損傷の程度をより詳しく評価したい場合や、軟骨損傷、腱損傷などが疑われる場合には、超音波(エコー)検査やMRI検査といった画像検査が追加されることがあります。超音波検査は、簡便に靭帯の状態を観察できます。MRI検査は、靭帯や軟骨、腱といった軟部組織の状態を詳細に評価できるため、重症度の判定や手術の必要性の判断などに役立ちます。これらの問診、診察、検査結果を総合的に判断し、医師は捻挫の診断を下し、その重症度(Ⅰ度:軽度、Ⅱ度:中等度、Ⅲ度:重度)を評価して、適切な治療方針を決定します。
捻挫診断までの流れと検査内容