メニエール病の診断と治療は、その病態が内耳の異常に起因することから、耳鼻咽喉科が専門となります。他の診療科でメニエール病と診断されたり、治療を受けたりすることもあるかもしれませんが、最終的な確定診断や専門的な治療方針の決定、そして長期的なフォローアップにおいては、耳鼻咽喉科医、特にめまいや聴覚を専門とする医師の関与が不可欠です。なぜなら、メニエール病の診断には、特有の症状(回転性めまい、難聴、耳鳴り、耳閉感の反復)の確認に加え、聴力検査や平衡機能検査といった専門的な検査によって、内耳の機能を評価することが重要だからです。聴力検査では、低音域の聴力低下や、めまい発作に伴う聴力の変動などが特徴的な所見として捉えられます。平衡機能検査では、眼振(がんしん:眼球の異常な動き)の観察や、体のふらつきを調べる検査などが行われ、めまいの原因が内耳にあるのか、それとも他の部位(例えば脳など)にあるのかを判断する手がかりとなります。これらの検査は、耳鼻咽喉科の専門的な知識と設備があってこそ、適切に実施・評価できるものです。また、メニエール病と似たようなめまいや難聴を引き起こす疾患は他にも多数存在します。例えば、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、突発性難聴、聴神経腫瘍、あるいは脳血管障害などです。これらの疾患との鑑別診断を正確に行うためにも、耳鼻咽喉科医の専門的な知識と経験が求められます。治療においても、メニエール病の病態を考慮した薬物療法(利尿薬、ステロイド薬、血流改善薬など)の選択や、生活習慣指導、そして場合によっては内リンパ嚢開放術といった外科的治療の検討など、専門的なアプローチが必要となります。したがって、メニエール病が疑われる場合、あるいは他の科でメニエール病と診断されたものの症状が改善しないといった場合には、めまいや聴覚を専門とする耳鼻咽喉科医のいる医療機関を受診することを強くお勧めします。