百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)という細菌に感染することによって引き起こされる呼吸器感染症です。かつては主に乳幼児の病気とされていましたが、近年ではワクチンの効果減弱や、感染機会の増加などにより、大人もかかることが増えています。では、大人が百日咳にかかるのはなぜなのでしょうか。その感染経路と原因について理解しておきましょう。百日咳の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る小さな飛沫(しぶき)に含まれる百日咳菌を吸い込むことで感染します(飛沫感染)。また、百日咳菌が付着した手で目や鼻、口を触ったり、あるいは菌が付着したドアノブや手すりなどに触れた手を介して感染したりすることもあります(接触感染)。百日咳菌は感染力が非常に強く、特に家庭内や学校、職場など、閉鎖された空間で長時間一緒に過ごす環境では、感染が広がりやすいと言われています。大人が百日咳にかかる原因としては、まず、子どもの頃に受けた百日咳ワクチンの効果が、時間とともに低下してしまうことが挙げられます。日本の定期予防接種では、DPT-IPV(四種混合)ワクチンやDPT(三種混合)ワクチンに百日咳成分が含まれており、乳幼児期に複数回接種しますが、その免疫効果は、個人差はあるものの、一般的に5年から10年程度で徐々に減弱していくと考えられています。そのため、青年期以降になると、百日咳菌に対する免疫が不十分になり、感染しやすくなるのです。また、百日咳は、症状が軽い場合や非典型的な場合、あるいは無症状の保菌者も存在するため、気づかないうちに感染源となっている人が周囲にいる可能性もあります。特に、長引く咳をしている人が身近にいる場合は注意が必要です。さらに、海外渡航の機会が増えたり、国際的な人の移動が活発になったりすることも、感染症の拡大に影響を与える可能性があります。これらの要因が複合的に絡み合い、大人の百日咳が増加していると考えられています。
大人の百日咳なぜかかる?感染経路と原因