唇やその周りにできるブツブツや水ぶくれ、ただれといった症状は、口唇ヘルペス以外にも様々な病気で見られることがあります。自己判断せずに、正確な診断を受けることが大切です。口唇ヘルペスと間違えやすい代表的な唇の病気をいくつかご紹介します。まず、「口角炎(こうかくえん)」です。これは、口の両端(口角)に炎症が起こり、赤みや腫れ、亀裂、かさぶたなどができる病気です。乾燥やビタミンB群の不足、カンジダという真菌(カビ)の感染、あるいは唾液による刺激などが原因となります。口唇ヘルペスのような水疱は通常見られません。次に、「口唇炎(こうしんえん)」です。これは、唇全体または一部に炎症が起こるもので、乾燥やひび割れ、皮むけ、赤み、腫れ、かゆみといった症状が現れます。原因としては、乾燥、紫外線、化粧品や歯磨き粉などによる接触皮膚炎(かぶれ)、アトピー性皮膚炎の一部、あるいは舐めたり噛んだりする癖などが考えられます。口唇ヘルペスのように、特定の場所に小さな水疱が集まってできるのとは異なります。また、「手足口病(てあしくちびょう)」も、夏場を中心に乳幼児に流行するウイルス感染症ですが、その名の通り、手のひら、足の裏、そして口の中に水疱性の発疹が現れます。唇やその周りにも水疱ができることがあり、口唇ヘルペスと見分けがつきにくい場合があります。ただし、手足口病の場合は、通常、手足にも発疹が見られるのが特徴です。その他、稀ではありますが、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」が顔面(三叉神経領域)に現れた場合、唇やその周囲に水疱や強い痛みを伴うことがあります。これは、水痘・帯状疱疹ウイルスによるもので、通常は体の片側に帯状に症状が出ます。「固定薬疹(こていやくしん)」といって、特定の薬剤を服用するたびに、同じ場所に円形の赤い発疹や水疱ができることもあります。これらの病気は、それぞれ原因や治療法が異なります。自己判断で市販薬を使用したり、放置したりせず、症状が続く場合は必ず皮膚科や内科、歯科・口腔外科などの専門医を受診し、正確な診断と適切な治療を受けるようにしましょう。
口唇ヘルペスと間違えやすい他の唇の病気