「風邪は治ったはずなのに、咳だけがいつまでも続いている」「一度咳き込むと止まらない」…。そんな長引く頑固な咳に悩まされているなら、それは単なる咳ではなく、「百日咳」の可能性があります。特に大人では症状が非典型的で診断が難しいこともありますが、適切な検査を受けることで診断に繋がることがあります。百日咳の診断は、まず詳しい問診と診察から始まります。いつから咳が出始めたのか、咳の性質(発作性か、笛声を伴うかなど)、咳が悪化する時間帯、他の症状(鼻水、微熱など)の有無、周囲に百日咳の患者さんがいないか、予防接種歴などを詳しく聞かれます。診察では、聴診などが行われますが、百日咳に特徴的な聴診所見は少ないとされています。診断を確定するためには、いくつかの検査が行われます。最も確実な診断方法は、鼻や喉の奥から検体を採取し、百日咳菌そのものを検出する「細菌培養検査」や、百日咳菌の遺伝子を検出する「PCR検査」です。これらの検査は、特に咳が出始めてから早い時期(2~3週間以内)に陽性となりやすいとされています。咳が出始めてから時間が経ってしまっている場合は、血液検査で百日咳菌に対する抗体の値を調べる「血清抗体価測定」が有効です。百日咳に感染すると、体内で抗体が作られるため、その抗体の種類や量を測定することで、最近の感染の有無を推定することができます。ペア血清といって、急性期と回復期の二時点で採血し、抗体価の上昇を確認することで、より確実な診断が可能となります。また、血液検査では、白血球数(特にリンパ球)の著しい増加が見られることも、百日咳を疑う所見の一つです。ただし、これらの検査結果だけでなく、臨床症状や周囲の流行状況などを総合的に判断して、医師は百日咳の診断を下します。長引く咳に悩んでいる場合は、自己判断せずに、呼吸器内科や耳鼻咽喉科、あるいはかかりつけの内科医を受診し、百日咳の可能性について相談してみることが大切です。
長引く咳は百日咳かも?診断と検査方法