下痢や嘔吐、腹痛といった症状が急に現れる感染性胃腸炎。その原因は、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、カンピロバクター、O-157など)の感染です。通常、感染性胃腸炎の主な症状は消化器系に限られますが、稀に、あるいは特定の条件下で、皮膚に湿疹のような症状が併発することがあります。どのような場合に注意が必要なのでしょうか。まず、感染性胃腸炎による激しい下痢や嘔吐が続くと、脱水症状を起こしやすくなります。脱水によって皮膚が乾燥し、バリア機能が低下すると、外部からの刺激に敏感になり、湿疹やかゆみが出やすくなることがあります。特に、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患がある場合は、胃腸炎による体調不良や脱水が、既存の皮膚症状を悪化させる引き金となることがあります。また、一部のウイルス感染症では、消化器症状とともに、ウイルスそのものが原因で発疹が現れることがあります。例えば、エンテロウイルス感染症の一部(手足口病やヘルパンギーナなど)では、口の中や手足、体幹部などに特徴的な水疱や発疹が出ますが、非典型的な場合には、下痢とともに全身に細かい赤い発疹が見られることもあります。伝染性単核球症(EBウイルス感染症)でも、発熱や喉の痛み、リンパ節腫脹とともに、皮膚に発疹が現れることがあります。さらに、感染性胃腸炎の治療のために服用した薬剤(例えば、抗生物質や解熱鎮痛剤など)に対するアレルギー反応として、「薬疹」という形で湿疹が出現することも考えられます。薬疹は、様々なタイプの皮膚症状(赤い斑点、蕁麻疹、水ぶくれなど)を引き起こし、発熱を伴うこともあります。そして、非常に稀ではありますが、重症な細菌感染症(例えば、敗血症など)では、皮膚に出血斑や紫斑といった特殊な皮疹が現れることがあります。これは緊急性の高いサインです。このように、感染性胃腸炎の経過中に湿疹が現れた場合、単なる皮膚の乾燥や刺激によるものか、それともウイルス性の発疹や薬疹、あるいは他の重篤な状態を示唆するものなのか、慎重な判断が必要です。自己判断せずに、医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。