扁桃腺の腫れと発熱は、一般的な風邪でも見られることがある症状ですが、急性扁桃炎の場合とはいくつかの点で違いが見られることがあります。これらの違いを理解しておくことは、適切な対処や受診の判断に役立ちます。まず、喉の痛みの強さです。風邪による喉の痛みは、比較的軽度から中等度で、イガイガ感や乾燥感が主であることが多いのに対し、急性扁桃炎の場合は、唾を飲み込むのも辛いほどの激しい痛み(嚥下痛)が現れるのが特徴です。食事や水分摂取も困難になることがあります。次に、喉の奥の所見です。風邪の場合、喉全体が赤くなっていることはありますが、扁桃腺が著しく腫れ上がったり、白い膿(白苔)が付着したりすることは、急性扁桃炎ほど顕著ではありません。急性扁桃炎では、扁桃腺がピンポイントで赤く大きく腫れ、しばしば白苔を伴います。また、発熱の程度も異なります。風邪でも発熱することはありますが、三十七度台の微熱から三十八度程度のことが多く、高熱が長期間続くことは比較的稀です。一方、急性扁桃炎では、三十八度以上の高熱が突然現れ、数日間持続することが少なくありません。悪寒や震えを伴うこともあります。全身症状の現れ方も、違いが見られることがあります。風邪の場合は、喉の痛みや発熱以外に、鼻水、鼻づまり、咳、くしゃみといった鼻や気管の症状(カタル症状)が主体となることが多いです。一方、急性扁桃炎の場合は、喉の症状が中心で、鼻症状はあまり目立たないか、あっても軽度であることが多いです。ただし、全身倦怠感や頭痛、関節痛といった全身症状は、どちらの場合でも現れる可能性があります。これらの違いはあくまで一般的な傾向であり、症状の現れ方には個人差があります。また、風邪が悪化して二次的に細菌感染を起こし、急性扁桃炎のような症状を呈することもあります。自己判断は難しいため、高熱がある、喉の痛みが非常に強い、あるいは症状が長引くといった場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。