お酒を飲むと、すぐに顔が赤くなったり、体に赤い斑点が出たりする人と、そうでない人がいます。この違いは、主に遺伝的な体質、特にアルコール(エタノール)の代謝に関わる酵素の働きによるものです。アルコールは、体内でまずアセトアルデヒドという物質に分解され、次にこのアセトアルデヒドが酢酸に分解されます。この第二段階の分解を担うのが、「アセトアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)」という酵素です。このALDH2の遺伝子には、活性型(よく働くタイプ)と低活性型(働きが弱いタイプ)、そして非活性型(ほとんど働かないタイプ)の三つの型があることが分かっています。日本人は、欧米人に比べて、このALDH2の低活性型や非活性型の遺伝子を持つ人の割合が高いと言われています(約40~45%程度)。ALDH2の活性が低い、あるいはない人は、アセトアルデヒドをスムーズに分解できないため、体内にアセトアルデヒドが長時間、高濃度で蓄積しやすくなります。アセトアルデヒドには血管を拡張させる作用があるため、これが顔や体の皮膚の毛細血管を拡張させ、赤みや赤い斑点として現れるのです。これが、いわゆる「お酒に弱い」と言われる人の特徴的な反応(フラッシング反応)です。赤い斑点以外にも、動悸、吐き気、頭痛、眠気といった不快な症状も同時に現れることが多いです。また、第一段階のアルコール分解を担う「アルコール脱水素酵素1B型(ADH1B)」の遺伝子型も、アルコールの代謝速度に関わっており、ADH1Bの活性が低い人は、エタノールが体内に長く留まりやすいため、酔いやすい傾向があります。これらの酵素の働きは遺伝によって決まるため、基本的にお酒を飲んで鍛えられるものではありません。お酒で赤い斑点が出やすい人は、アセトアルDEHDの分解能力が低い体質である可能性が高いことを自覚し、無理な飲酒は避けることが大切です。自分の体質を知るためには、遺伝子検査などもありますが、まずは少量の飲酒での体の反応を観察することが一つの目安となるでしょう。