ロタウイルスワクチンは、ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防する上で非常に有効なワクチンとして、多くの国で定期接種に導入されています。日本でも、2020年10月から定期接種化され、生後6週から接種が可能です。では、このロタウイルスワクチンを接種していれば、もうロタウイルスにかかることはないのでしょうか。結論から言うと、ロタウイルスワクチンを接種していても、ロタウイルスに感染し、胃腸炎の症状が出ることがあります。ただし、その場合でも、ワクチンを接種していない場合に比べて、症状が軽く済む、あるいは重症化(特に、入院が必要となるような重い脱水症状や、けいれん、脳炎・脳症といった合併症)を防ぐ効果が非常に高いことが分かっています。ロタウイルスワクチンは、生ワクチン(弱毒化したウイルスを使ったワクチン)であり、腸管で免疫を作ることで、ロタウイルスの感染や増殖を抑える働きをします。しかし、ワクチンの効果は100%ではなく、また、ロタウイルスにはいくつかの血清型(ウイルスの種類)が存在するため、ワクチンに含まれていない型のウイルスに感染した場合や、免疫のつき方によっては、感染・発症を完全に防ぎきれないことがあります。これを「ブレイクスルー感染」と呼びます。ブレイクスルー感染の場合でも、ワクチンを接種していることで、嘔吐や下痢の回数が少なかったり、発熱の程度が軽かったり、回復が早かったりといった効果が期待できます。つまり、ワクチン接種の最大の目的は、「感染を完全に防ぐこと」というよりも、「重症化を防ぎ、入院や合併症のリスクを減らすこと」にあると言えます。したがって、ロタウイルスワクチンを接種していても、流行期には手洗いやうがいといった基本的な感染予防策を怠らず、もし胃腸炎の症状が出た場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。ワクチン接種は、お子さんをロタウイルス胃腸炎のつらい症状や重症化から守るための重要な手段の一つであることを理解しておきましょう。