口唇ヘルペスが疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に皮膚科や内科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どのような症状(ピリピリ感、かゆみ、水疱、びらん、痛みなど)があるのか、症状が現れた場所、過去に同様の症状があったか(再発かどうか)、その時の状況や治療内容、最近の体調(疲労、ストレス、風邪など)、他に気になる症状はないか、既往歴、服用中の薬などを詳しく聞かれます。この問診は、診断の手がかりを得るために非常に重要です。次に、視診です。医師は、患部の状態(水疱の形や数、赤み、腫れ、びらん、かさぶたの有無など)を注意深く観察します。口唇ヘルペスに特徴的な、小さな水疱が集まってできている状態(集簇性小水疱)や、特定の神経の走行に沿って症状が出ているかなどを確認します。多くの場合、この問診と視診による臨床症状から、口唇ヘルペスの診断が下されます。しかし、症状が非典型的であったり、診断に迷う場合、あるいは初発で重症な場合などには、確定診断のために検査が行われることがあります。代表的な検査としては、「ウイルス抗原検査」があります。これは、水疱の内容物や、びらん面を綿棒などでこすって検体を採取し、その中に単純ヘルペスウイルスの抗原(ウイルスの一部)が存在するかどうかを調べる迅速検査です。比較的短時間(15~30分程度)で結果が分かります。また、「PCR検査(核酸増幅検査)」も、ウイルス遺伝子を検出する感度の高い検査で、確定診断に用いられることがあります。その他、血液検査で単純ヘルペスウイルスに対する抗体の有無や種類を調べる「血清抗体価測定」もありますが、これは過去の感染の有無や、初感染か再発かの判断の参考にされることはあっても、急性期の診断にはあまり用いられません。これらの問診、診察、検査結果を総合的に判断し、医師は口唇ヘルペスの診断を下し、適切な治療方針を決定します。
口唇ヘルペス診断までの流れと検査内容