腱鞘炎が疑われる場合、医療機関(主に整形外科)ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どの部位(手首、親指の付け根、指など)が、どのように痛むのか(ズキズキ、ジンジン、動かすと痛いなど)、どのような時に痛みが強くなるのか(物を持つ時、捻る時、特定の指を動かす時など)、仕事や趣味、スポーツなどで手や指を酷使するようなことはないか、過去に同様の症状があったか、既往歴、利き手などを詳しく聞かれます。この問診は、原因や症状の程度を把握する上で非常に重要な情報となります。次に、身体診察です。医師は、患部の腫れや赤み、熱感、圧痛(押したときの痛み)の有無や程度を視診や触診で確認します。また、関節の動き(可動域)や、特定の動作で痛みが増強するかどうかを調べる誘発テスト(例えば、ドケルバン病の場合はフィンケルシュタインテスト、ばね指の場合は指の屈伸運動など)を行います。これらの診察所見から、腱鞘炎の可能性が高いと判断された場合、さらに原因や状態を詳しく調べるために検査が行われることがあります。一般的に行われるのは、レントゲン(X線)検査です。レントゲン検査では、腱や腱鞘そのものは写りませんが、骨の変形や骨棘(こつきょく:骨のトゲ)、石灰沈着、あるいは他の骨関節疾患(関節炎や骨折など)がないかを確認し、腱鞘炎以外の原因を除外するのに役立ちます。より詳しく腱や腱鞘の状態を評価したい場合には、超音波(エコー)検査が行われます。超音波検査では、腱の肥厚や腱鞘内の液体の貯留、炎症の程度などをリアルタイムで観察することができます。また、MRI検査は、腱や腱鞘だけでなく、周囲の軟部組織の状態も詳細に評価できるため、診断が難しい場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合に用いられることがあります。これらの問診、診察、検査結果を総合的に判断し、医師は腱鞘炎の診断を下し、その種類や重症度を評価して、適切な治療方針を決定します。