グルグルと目が回る回転性のめまいは、メニエール病の代表的な症状ですが、同様のめまいを引き起こす病気は他にもいくつか存在します。正確な診断と適切な治療のためには、これらの疾患との鑑別が重要になります。メニエール病と間違えやすい代表的なめまいの病気をいくつかご紹介します。まず、「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。これは、内耳にある耳石(炭酸カルシウムの結晶)が剥がれ落ち、三半規管の中に入り込むことで起こるめまいで、めまい疾患の中で最も頻度が高いと言われています。特定の頭の位置の変化(例えば、寝返りを打った時、起き上がった時、上を向いた時など)によって、数秒から数十秒程度の短い回転性めまいが誘発されるのが特徴です。難聴や耳鳴りは伴いません。次に、「前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)」です。これは、平衡感覚を司る前庭神経に炎症が起こることで、突然の激しい回転性めまいと、吐き気、嘔吐が生じる病気です。めまいは数日間持続することが多く、難聴や耳鳴りは伴いません。風邪などのウイルス感染後に発症することが多いとされています。また、「突発性難聴」も、めまいを伴うことがあります。突然、片側の耳が聞こえにくくなる病気で、耳鳴りや耳閉感を伴うこともあります。めまいは、回転性の場合もあれば、フワフワとした浮動性の場合もあります。早期の治療開始が聴力の回復には重要です。「聴神経腫瘍」は、聴神経にできる良性の腫瘍ですが、ゆっくりと大きくなる過程で、めまいや難聴、耳鳴りを引き起こすことがあります。初期には症状が軽微なこともありますが、進行すると顔面神経麻痺などを伴うこともあります。さらに、「椎骨脳底動脈循環不全(ついこつのうていどうみゃくじゅんかんふぜん)」といった脳血管の血流障害や、稀ですが脳梗塞や脳出血といった脳の病気が原因で、めまいが生じることもあります。これらの場合は、めまい以外にも、手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないといった他の神経症状を伴うことが多いです。このように、めまいの原因は多岐にわたるため、自己判断せずに、必ず耳鼻咽喉科や神経内科などの専門医を受診し、正確な診断を受けるようにしましょう。