抗生物質（抗菌薬）を服用しても一向に改善しない、あるいは風邪の症状が治まった後も咳だけが数週間以上も続いている場合、それは単なる風邪の治りかけや感染後咳嗽ではなく、「咳喘息（せきぜんそく）」や「アトピー咳嗽（がいそう）」といった慢性的な咳を引き起こす病気の可能性があります。これらの病気は、細菌感染が原因ではないため、抗生物質は効果がありません。まず、咳喘息は、気管支喘息の前段階とも考えられている病気で、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴（ぜんめい）や呼吸困難はなく、咳だけが主な症状として長期間（通常は八週間以上）続きます。咳は、乾いた咳が多いとされていますが、痰が絡むこともあります。特に、夜間や早朝、あるいは冷たい空気を吸い込んだ時、会話をした時、運動をした時、タバコの煙やハウスダストなどの刺激に触れた時などに咳が悪化しやすいのが特徴です。気道の慢性的な炎症と過敏性が原因と考えられており、治療には気管支拡張薬や吸入ステロイド薬が用いられます。次に、アトピー咳嗽も、アレルギー体質の人に起こりやすい慢性的な咳です。喉のイガイガ感や痒みを伴う乾いた咳が特徴ですが、痰が絡むこともあります。咳喘息と同様に、特定の刺激（エアコンの風、タバコの煙、ホコリなど）によって咳が出やすくなります。アトピー咳嗽の治療には、抗ヒスタミン薬や吸入ステロイド薬が有効とされています。これらの病気は、胸部レントゲン検査では異常が見られないことが多く、診断には、症状の詳しい聞き取りや、呼吸機能検査（咳喘息の場合）、アレルギー検査などが参考にされます。もし、抗生物質を飲んでも咳が止まらない、あるいは熱もないのに咳だけが長く続いている、特に夜間や早朝に咳が悪化するといった特徴があれば、咳喘息やアトピー咳嗽の可能性も考え、呼吸器内科やアレルギー科、あるいは耳鼻咽喉科などを受診し、相談してみることをお勧めします。適切な診断と治療を受けることで、つらい咳の症状をコントロールすることができます。