妊娠中に口内炎が一度だけでなく、何度も繰り返してできる場合、あるいはなかなか治らない場合は、単なる体調の変化によるものだけでなく、何か他の病気が隠れている可能性も考慮する必要があります。どのような病気が考えられるのでしょうか。まず、最も一般的なのは、やはりホルモンバランスの変化や免疫力の低下、栄養不足といった妊娠特有の要因による「アフタ性口内炎」の再発です。これは、円形または楕円形の白い潰瘍(かいよう)ができるもので、通常は一週間から二週間程度で自然に治癒しますが、妊娠中は治りが遅かったり、繰り返しやすかったりすることがあります。次に、注意が必要なのが「ヘルペス性口内炎」です。これは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染によって起こり、唇や口の周りだけでなく、口の中の粘膜にも小さな水疱(水ぶくれ)が多数でき、それが破れてびらんや潰瘍になります。発熱やリンパ節の腫れを伴うこともあり、痛みが非常に強いのが特徴です。妊娠中に初感染したり、再発したりすることがあります。この場合は、抗ウイルス薬による治療が必要となることがあります。また、「カンジダ性口内炎」も、妊娠中の免疫力低下によって起こりやすくなることがあります。これは、カンジダという真菌(カビ)の一種が口腔内で異常増殖することで起こり、舌や頬の粘膜に白い苔のようなものが付着したり、赤くただれたりします。治療には抗真菌薬が用いられます。その他、稀ではありますが、「ベーチェット病」や「クローン病」といった全身性の炎症性疾患の一部として、口内炎が繰り返し現れることもあります。これらの場合は、口内炎以外にも、皮膚症状や関節症状、消化器症状など、他の全身症状を伴うことが多いです。さらに、鉄欠乏性貧血やビタミンB群欠乏症といった栄養障害も、口内炎を繰り返し引き起こす原因となります。妊娠中は特にこれらの栄養素が不足しやすいため、注意が必要です。もし、妊娠中に口内炎が頻繁にできる、治りにくい、あるいは他の気になる症状がある場合は、自己判断せずに、産婦人科医やかかりつけ医に相談し、必要であれば専門医(歯科・口腔外科、皮膚科、内科など)の診察を受けるようにしましょう。
繰り返しできる妊娠中の口内炎他の病気の可能性は?