手首や指に痛みやしびれ、動かしにくさといった症状が現れると、まず腱鞘炎を疑う方が多いかもしれません。しかし、これらの症状は、腱鞘炎以外の他の手の病気でも見られることがあるため、自己判断せずに正確な診断を受けることが大切です。腱鞘炎と間違えやすい代表的な手の病気をいくつかご紹介します。まず、「関節リウマチ」です。これは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる自己免疫疾患で、手の指の関節(特に第二関節や付け根の関節)や手首の関節に、朝方のこわばりや腫れ、痛みが左右対称に現れることが多いのが特徴です。進行すると関節の変形をきたすこともあります。腱鞘炎も関節リウマチの症状の一つとして現れることがあります。「変形性関節症」も、加齢や使いすぎによって関節の軟骨がすり減り、炎症や変形が生じる病気です。手の指の第一関節(へバーデン結節)や第二関節(ブシャール結節)に、腫れや痛み、こぶのようなものができることがあります。また、「ガングリオン」は、関節や腱鞘の近くにできるゼリー状の液体が詰まった袋状の腫瘤(しゅりゅう)です。手首や指の付け根によくでき、神経を圧迫すると痛みやしびれの原因となることがあります。「TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)」は、手首の小指側にある軟骨や靭帯の複合体が損傷するもので、手首を捻ったり、小指側に曲げたりすると痛みが生じます。転倒やスポーツなどで手をついた際に起こりやすいです。さらに、「末梢神経障害」も手のしびれや痛みの原因となります。糖尿病性神経障害や、首の神経の圧迫(頸椎症性神経根症など)、あるいは手根管症候群や肘部管症候群といった絞扼性神経障害(こうやくせいしんけいしょうがい)も、腱鞘炎と症状が類似していることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。自己判断でマッサージをしたり、湿布を貼ったりするだけでは、症状が悪化したり、診断が遅れたりする可能性もあります。手の痛みやしびれが続く場合は、必ず整形外科を受診し、専門医による正確な診断と適切な治療を受けるようにしましょう。
腱鞘炎と間違えやすい他の手の病気