妊娠中に口内炎ができてしまった場合、薬の使用については特に慎重になる必要があります。自己判断で市販薬を使用するのは避け、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。では、妊娠中でも安全に使用できる可能性のある口内炎の治療薬には、どのようなものがあるのでしょうか。まず、塗り薬(外用薬)が治療の主体となります。口内炎の炎症を抑え、痛みを和らげる目的で、ステロイド成分を含まない非ステロイド性の抗炎症薬の軟膏や、局所麻酔成分が配合された軟膏、あるいは口腔粘膜保護剤などが用いられることがあります。これらの薬は、患部に直接塗布するため、全身への影響は比較的少ないと考えられています。また、症状が強い場合や、治りにくい場合には、医師の判断のもと、妊娠中でも比較的安全に使用できるとされる弱いランクのステロイド軟膏が処方されることもあります。ステロイド軟膏は、炎症を強力に抑える効果がありますが、長期間の使用や広範囲への使用は避けるべきであり、必ず医師の指示通りに使用することが重要です。貼り薬(パッチ剤)も、患部を保護し、薬効を持続させる効果があるため、選択肢の一つとなります。次に、飲み薬(内服薬)ですが、妊娠中の口内炎に対して、抗生物質や抗ウイルス薬、あるいは強いステロイドの内服薬が用いられることは、通常、よほど重症な場合や特殊なケースを除いては稀です。ただし、口内炎の原因が細菌感染やウイルス感染(例えば、ヘルペス性口内炎など)であると診断され、医師が必要と判断した場合には、妊娠の時期や薬の種類を慎重に考慮した上で処方されることがあります。ビタミンB群やビタミンCといったビタミン剤の補給も、口内炎の治癒を助けるために行われることがあります。これらは、食事からの摂取が基本ですが、不足している場合にはサプリメントや処方薬として用いられることがあります。いずれにしても、妊娠中の薬の使用は、胎児への影響を考慮し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合に限られます。必ず産婦人科医や歯科医師、薬剤師に相談し、安全性を確認した上で、指示された用法・用量を守って使用するようにしましょう。