手足にできる「こぶ」や「しこり」は、ガングリオンであることが多いですが、中には他の病気である可能性も否定できません。自己判断は禁物であり、正確な診断のためには専門医の診察が不可欠です。ガングリオンと間違えやすい代表的なこぶや腫瘍をいくつかご紹介します。まず、「脂肪腫(しぼうしゅ)」です。これは、皮膚の下にできる良性の脂肪組織の塊で、ガングリオンと同様に、体の様々な場所にできます。触ると、ガングリオンよりも柔らかく、弾力性のあるこぶとして感じられることが多いです。通常、痛みはありませんが、大きくなると神経を圧迫して症状が出ることがあります。次に、「粉瘤(ふんりゅう)」、または「アテローム」とも呼ばれるものです。これは、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に垢(角質)や皮脂が溜まってできる良性の腫瘍です。中心に黒い点(開口部)が見られることがあり、強く押すと臭いのある粥状の内容物が出てくることがあります。炎症を起こすと、赤く腫れて痛みを伴い、化膿することもあります。また、「腱鞘巨細胞腫(けんしょうきょさいぼうしゅ)」も、指や手首にできる比較的稀な良性腫瘍です。硬いしこりとして触れ、ゆっくりと大きくなることが多いです。ガングリオンと異なり、超音波検査では充実性(液体ではなく組織で満たされている)の腫瘤として描出されます。さらに、血管の異常によってできる「血管腫(けっかんしゅ)」や、神経から発生する「神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)」なども、こぶとして触れることがあります。そして、最も注意が必要なのが、「悪性軟部腫瘍(サルコーマなど)」といった悪性の腫瘍です。これらは非常に稀ではありますが、ガングリオンと似たようなこぶとして現れることがあります。急速に大きくなる、硬くて動かない、痛みを伴う、皮膚の表面が変化するといった場合は、悪性の可能性も考慮し、精密な検査が必要です。このように、手足にできるこぶの原因は様々です。気になるこぶを見つけたら、安易にガングリオンと決めつけず、必ず整形外科や皮膚科などの医療機関を受診し、正確な診断を受けるようにしましょう。