適応障害と診断された場合、その治療は、主にストレス要因の調整(環境調整)と、ストレスへの対処能力を高めるための精神療法(カウンセリングなど)、そして必要に応じた薬物療法が組み合わせて行われます。まず、最も重要なのが「環境調整」です。適応障害は、特定のストレス要因に対する反応として起こるため、そのストレス要因を特定し、可能な範囲で軽減または除去することが、症状改善のための第一歩となります。例えば、職場環境が原因であれば、業務内容の調整、配置転換、休職といった対応が考えられます。家庭内の問題であれば、家族関係の調整や、家族カウンセリングなどが有効な場合があります。学校生活が原因であれば、担任教師やスクールカウンセラーとの連携、学習環境の調整などが検討されます。ただし、ストレス要因を完全に取り除くことが難しい場合も少なくありません。次に、「精神療法(カウンセリング)」です。臨床心理士や公認心理師などの専門家との対話を通じて、自分の感情や思考パターンに気づき、ストレスへの対処法(コーピングスキル)を身につけたり、問題解決能力を高めたりすることを目指します。支持的精神療法(患者さんの気持ちに寄り添い、共感的に話を聞くことで安心感を与える)や、認知行動療法(ストレスに対する考え方や行動の癖を修正し、より適応的なものに変えていく)などが代表的です。精神療法は、症状の軽減だけでなく、再発予防にも繋がる重要な治療法です。そして、「薬物療法」は、主に精神症状や身体症状が強く、日常生活に大きな支障が出ている場合に、補助的に用いられます。不安感や緊張感が強い場合には抗不安薬、不眠がある場合には睡眠導入剤、気分の落ち込みが著しい場合には抗うつ薬などが、医師の判断によって処方されます。これらの薬は、症状を一時的に和らげる効果はありますが、適応障害そのものを根本的に治すものではありません。あくまで、精神療法や環境調整がスムーズに進むようにサポートするためのものと理解しておくことが大切です。治療法は、個々の患者さんの状態や状況に合わせて、医師や専門家とよく相談しながら決定していきます。
適応障害の治療法環境調整と精神療法が中心