健康診断などで肝機能の異常を指摘され、精密検査を受けることになった場合、具体的にどのような検査が行われるのでしょうか。不安を感じる方もいるかもしれませんが、検査内容を事前に知っておくことで、少しは安心して臨めるでしょう。精密検査の目的は、肝機能異常の原因を特定し、肝臓の状態をより詳しく評価することです。まず、基本となるのが、より詳細な血液検査です。健康診断で行われる一般的な肝機能検査項目(AST、ALT、γ-GTPなど)に加えて、肝炎ウイルスのマーカー(HBs抗原・抗体、HCV抗体など)、自己免疫性肝炎に関連する自己抗体、鉄や銅の代謝異常を調べる項目、腫瘍マーカー(AFPやPIVKA-IIなど)、肝臓の線維化(硬さ)の程度を評価するマーカーなどを調べることがあります。これにより、ウイルス性肝炎の有無や種類、自己免疫性の肝疾患の可能性、あるいは脂肪肝や肝硬変の進行度などを推測することができます。次に、重要な画像検査として、腹部超音波(エコー)検査があります。これは、超音波を使って肝臓の形や大きさ、内部の状態(脂肪の蓄積具合、腫瘍や嚢胞、結石の有無など)、そして肝臓内の血管の状態などをリアルタイムで観察する非侵襲的な検査です。比較的簡便に行え、多くの情報が得られるため、初期の精密検査として広く用いられます。腹部超音波検査で異常が疑われた場合や、より詳しい情報が必要な場合には、CT検査やMRI検査といった高度な画像検査が行われます。これらの検査では、肝臓を輪切りにしたような詳細な画像が得られ、小さな腫瘍の発見や、肝臓の血流状態、胆管の異常などを評価するのに役立ちます。造影剤を使用することで、さらに鮮明な画像を得ることもあります。そして、これらの検査でも診断が確定しない場合や、肝臓の組織の状態を直接調べる必要がある場合には、「肝生検(かんせいけん)」が行われることがあります。これは、局所麻酔をした上で、細い針を肝臓に刺し、ごく少量の肝臓組織を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。入院が必要となることが一般的です。これらの検査結果を総合的に判断し、医師は肝機能異常の原因と病状を診断し、適切な治療方針を決定します。