口唇ヘルペスと診断された場合、その治療は、主にウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」の使用が中心となります。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、治癒までの期間を短縮し、そして合併症のリスクを減らすことが期待できます。抗ウイルス薬には、塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)があります。どちらを使用するかは、症状の程度や範囲、発症からの時間、そして患者さんの状態などを考慮して医師が判断します。まず、塗り薬としては、アシクロビルやビダラビンといった成分の軟膏やクリームが用いられます。これらは、ヘルペスウイルスのDNA合成を阻害することで、ウイルスの増殖を抑える働きがあります。症状が出始めた初期(ピリピリとした違和感やかゆみを感じた段階)から、できるだけ早く塗布を開始し、医師の指示通りに、一日数回、患部に薄く塗るのが効果的です。水疱が破れてびらんになっている場合でも使用できます。次に、飲み薬としては、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルといった抗ウイルス薬が用いられます。これらの内服薬は、塗り薬よりも強力にウイルスの増殖を抑える効果があり、症状が広範囲である場合や、痛みが強い場合、再発を頻繁に繰り返す場合、あるいは免疫力が低下している患者さんなどに処方されることが多いです。内服薬も、症状が出始めてからできるだけ早く(理想的には48~72時間以内)服用を開始することが重要です。処方された期間、用法・用量を守って必ず最後まで飲み切るようにしましょう。自己判断で途中でやめてしまうと、ウイルスの増殖が再燃したり、薬剤耐性ウイルスが出現したりする可能性があります。抗ウイルス薬以外には、症状に応じて、痛みを和らげるための鎮痛剤(アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬など)や、細菌による二次感染を予防・治療するための抗菌薬の塗り薬や飲み薬が併用されることもあります。口唇ヘルペスの治療は、早期発見・早期治療が鍵となります。症状に気づいたら、我慢せずに速やかに医療機関を受診しましょう。