新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、発熱や咳といった呼吸器症状だけでなく、皮膚に現れる症状にも注目が集まっています。特に、発熱後に発疹が出現した場合、「コロナではないか」と不安になる方も多いでしょう。しかし、発熱後に発疹が出る病気はコロナ以外にも多数存在するため、正確な鑑別診断が非常に重要になります。コロナウイルス感染症による皮膚症状は、前述の通り、麻疹様、風疹様、蕁麻疹様、水疱様、凍瘡様など、非常に多彩な形で現れることが報告されています。これらの発疹は、発症のタイミングも様々で、発熱と同時期に出ることもあれば、数日後、あるいは回復期に出現することもあります。また、かゆみの有無や程度も個人差が大きいです。そのため、発疹の見た目だけでコロナウイルス感染症と断定することは困難です。鑑別すべき他の疾患としては、まず、麻疹や風疹といった古典的なウイルス性発疹症が挙げられます。これらの疾患は、特有の発疹の広がり方や、他の随伴症状(例えば、麻疹ならコプリック斑やカタル症状、風疹ならリンパ節腫脹など)が診断の手がかりとなります。また、エンテロウイルス感染症(手足口病やヘルパンギーナなど)や、伝染性単核球症(EBウイルス感染症)、突発性発疹(主に乳幼児だが稀に成人)なども、発熱後に発疹が現れることがあります。細菌感染症である溶連菌感染症では、猩紅熱様発疹という細かい赤い発疹が特徴的です。さらに、薬疹(薬の副作用による発疹)も重要な鑑別対象です。解熱剤や抗生物質など、何らかの薬を服用した後に発疹が出た場合は、薬疹の可能性を考える必要があります。その他、膠原病や血管炎といった自己免疫疾患の一部として、発熱と発疹が現れることもあります。このように、発熱後の発疹の原因は多岐にわたるため、自己判断は禁物です。必ず医療機関(内科や皮膚科など)を受診し、詳しい問診、診察、そして必要に応じた検査(血液検査、ウイルス抗原検査、PCR検査、皮膚生検など)を受け、正確な診断を得ることが、適切な治療と感染拡大防止のために不可欠です。
コロナ禍における発熱後の発疹鑑別診断の重要性