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セリアック病やグルテン不耐症と下痢・湿疹
下痢や腹痛といった消化器症状とともに、かゆみを伴う特徴的な湿疹(疱疹状皮膚炎:ほうしんじょうひふえん)が繰り返し現れる場合、それは「セリアック病」や「グルテン不耐症」といった、グルテン(小麦、大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質の一種)に対する免疫反応が関与している病気の可能性があります。これらの病気は、日本では比較的稀とされてきましたが、近年、食生活の欧米化などにより、注目されるようになってきています。セリアック病は、遺伝的な素因を持つ人がグルテンを摂取することで、小腸の粘膜に炎症が起こり、栄養素の吸収が悪くなる自己免疫疾患です。主な症状は、下痢、腹痛、腹部膨満感、体重減少、貧血、倦怠感などですが、皮膚症状として疱疹状皮膚炎が現れることがあります。疱疹状皮膚炎は、肘や膝、お尻、頭皮などに、強いかゆみを伴う小さな水ぶくれ(水疱)や赤いブツブツ(丘疹)が集まってできるのが特徴です。グルテン不耐症(非セリアック・グルテン過敏症とも呼ばれます)は、セリアック病のような自己免疫反応や小腸粘膜の明らかな異常は見られないものの、グルテンを摂取することで、下痢や腹痛、頭痛、倦怠感、そして湿疹やかゆみといった様々な症状が現れる状態を指します。症状の現れ方は個人差が大きく、診断も難しいとされています。もし、グルテンを含む食品(パン、パスタ、うどん、ビールなど)を摂取した後に、決まって下痢や腹痛、そしてかゆみを伴う湿疹が出るというような関連性が疑われる場合は、消化器内科やアレルギー科、皮膚科などの専門医に相談してみることをお勧めします。診断には、血液検査(セリアック病に関連する自己抗体の測定など)や、小腸の生検(内視鏡で組織を採取して調べる検査)、そしてグルテン除去食(グルテンを含まない食事)を試みて症状が改善するかどうかを見るといった方法が用いられます。原因が特定されれば、グルテン除去食を継続することが、症状のコントロールと再発予防のための基本的な治療法となります。