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大人の百日咳治療法と薬物療法
大人が百日咳と診断された場合、その治療は、主に抗菌薬(抗生物質)による薬物療法が中心となります。適切な治療を早期に開始することで、症状の重症化を防ぎ、回復を早め、そして周囲への感染拡大を抑えることが期待できます。百日咳の原因菌である百日咳菌に対して有効な抗菌薬としては、マクロライド系の薬剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が第一選択薬として用いられます。これらの薬剤は、百日咳菌の増殖を抑える効果があり、特に咳が出始めてから早い時期(カタル期:初期の風邪様症状の時期、あるいは痙咳期:特徴的な咳発作の時期の初期)に投与を開始すると、症状の軽減や期間の短縮が期待できると言われています。ただし、咳が出始めてから時間が経ち、痙咳期が進行している場合には、抗菌薬を投与しても咳症状そのものを劇的に改善させる効果は限定的であるとされています。しかし、この場合でも、菌の排出を抑え、周囲への感染を防ぐという重要な目的があるため、抗菌薬の投与は推奨されます。処方された抗菌薬は、症状が改善しても自己判断で中断せず、必ず医師の指示通りに最後まで飲み切ることが大切です。途中でやめてしまうと、菌が完全に死滅せずに再発したり、薬剤耐性菌を生み出したりする原因にもなりかねません。抗菌薬の副作用としては、下痢や軟便、吐き気、腹痛といった消化器症状が比較的よく見られます。もし、副作用が強く現れた場合は、医師に相談し、薬剤の変更などを検討してもらいましょう。また、咳の症状が強い場合には、咳を和らげるための鎮咳薬や去痰薬、気管支拡張薬などが対症療法として処方されることもあります。しかし、これらの薬はあくまで症状を緩和するものであり、百日咳そのものを治すわけではありません。大人の百日咳の治療においては、抗菌薬による原因菌の除去と、十分な休息、水分補給、そして栄養バランスの取れた食事が基本となります。