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百日咳の予防ワクチンは大人にも効果ある?
百日咳の予防には、ワクチン接種が最も有効な手段です。日本では、乳幼児期に定期予防接種として、DPT-IPV(四種混合:ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ)ワクチンまたはDPT(三種混合:ジフテリア・百日せき・破傷風)ワクチンが接種されています。しかし、これらのワクチンによって獲得された免疫(抗体価)は、時間とともに徐々に低下していくことが知られており、一般的には接種後5年から10年程度で、百日咳菌に対する十分な予防効果が期待できなくなると言われています。そのため、子どもの頃に定期予防接種を完了していても、青年期以降になると、再び百日咳にかかるリスクが高まります。これが、近年、大人の百日咳が増加している大きな要因の一つです。では、大人が百日咳を予防するために、再度ワクチンを接種することはできるのでしょうか。答えは「イエス」です。大人向けの百日咳含有ワクチンとして、Tdap(破傷風・ジフテリア・百日せき混合)ワクチンがあります。このTdapワクチンは、日本では任意接種(自費診療)となりますが、接種することで、百日咳に対する免疫力を高め、発症予防や重症化予防の効果が期待できます。特に、妊娠中(妊娠27週から36週頃が推奨されています)の女性がTdapワクチンを接種すると、母親の体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生まれてくる赤ちゃんを百日咳から守る効果(いわゆる「コकून戦略」)があることが分かっています。生後間もない赤ちゃんは、百日咳にかかると重症化しやすいため、これは非常に重要な予防策となります。また、乳幼児と接する機会の多い家族(父親、祖父母、兄弟姉妹など)や、医療従事者、保育関係者なども、Tdapワクチンの接種が推奨されています。自分自身を守るためだけでなく、周囲の免疫の弱い人々を守るためにも、大人の百日咳ワクチン接種は有効な選択肢と言えるでしょう。接種を希望する場合は、医師に相談し、メリットとデメリットをよく理解した上で検討してください。