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炎症性腸疾患(IBD)の可能性も?慢性的な下痢と皮膚症状
慢性的な下痢が続き、それに加えて皮膚にも湿疹やその他の異常が現れる場合、それは単なる一時的な不調ではなく、「炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)」のサインである可能性も考慮する必要があります。炎症性腸疾患とは、主に消化管に原因不明の慢性的な炎症や潰瘍が生じる病気の総称で、代表的なものに「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」があります。これらの病気は、消化器症状だけでなく、腸管外にも様々な合併症(腸管外合併症)を引き起こすことがあり、皮膚症状もその一つとして現れることがあります。潰瘍性大腸炎は、主に大腸の粘膜に炎症やびらん、潰瘍ができる病気で、主な症状は粘血便(血液や粘液の混じった便)や下痢、腹痛、発熱などです。クローン病は、口から肛門までの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が生じる可能性があり、下痢、腹痛、体重減少、発熱などが主な症状です。これらの炎症性腸疾患に伴って現れる皮膚症状としては、「結節性紅斑(けっせつせいこうはん)」が比較的よく見られます。これは、主にすねや腕に、痛みを伴う赤いしこり(結節)ができるものです。「壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)」も、稀ですが重篤な皮膚合併症の一つで、皮膚に深い潰瘍ができ、急速に拡大していくことがあります。「口腔内アフタ性潰瘍(こうくうないあふたせいかいよう)」も、炎症性腸疾患の患者さんによく見られる症状で、口の中に痛みを伴う白い潰瘍ができます。その他、乾癬(かんせん)様の皮疹や、多形紅斑、スイート病といった皮膚症状が関連することもあります。もし、慢性的な下痢(特に血便を伴う場合)とともに、原因不明の湿疹や、上記のような特殊な皮膚症状が繰り返し現れるようであれば、炎症性腸疾患の可能性も視野に入れ、消化器内科を受診することをお勧めします。消化器内科では、内視鏡検査(大腸カメラなど)や生検、血液検査などを行い、診断を確定し、適切な治療(薬物療法や栄養療法、場合によっては手術など)を開始します。早期の診断と治療が、症状のコントロールとQOLの維持には非常に重要です。