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手掌多汗症の主な原因とメカニズム
手のひらに異常なほど多くの汗をかく手掌多汗症。その不快な症状は、一体どのような原因とメカニズムで起こるのでしょうか。手掌多汗症の多くは、明らかな原因疾患が見つからない「原発性手掌多汗症」です。原発性手掌多汗症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、汗の分泌をコントロールしている自律神経のうち、交感神経が過敏に反応し、過剰に活動してしまうことが主な原因と考えられています。私たちの体には、エクリン汗腺という汗腺が全身に分布しており、体温調節のために汗を分泌しています。手のひらにもエクリン汗腺が非常に多く存在し、これらの汗腺は交感神経によって支配されています。通常、交感神経は、体温が上昇した時や運動時、あるいは精神的な緊張やストレスを感じた時に活動が活発になり、発汗を促します。しかし、手掌多汗症の人の場合、これらの刺激に対して交感神経が過剰に反応し、必要以上の汗を分泌してしまうと考えられているのです。特に、精神的な要因(不安、緊張、興奮、ストレスなど)が、交感神経を刺激し、発汗を誘発・悪化させる大きなきっかけとなることがよくあります。例えば、人前で話す時や、テストを受ける時、初めての人と会う時などに、急に手のひらから大量の汗が噴き出すといった経験をする方が少なくありません。また、遺伝的な素因も関与している可能性が指摘されており、家族内に同様の症状を持つ人がいる場合もあります。一方で、まれに他の病気(例えば、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、糖尿病性神経障害、脳や脊髄の疾患など)や、服用している薬剤の副作用として、手のひらの多汗が起こる「続発性手掌多汗症」もあります。この場合は、原因となっている病気の治療や、薬剤の変更などが必要となります。いずれにしても、手掌多汗症の背景には、交感神経の過剰な働きが深く関わっていると考えられています。