水疱瘡は、多くの場合、自然に治癒する比較的予後の良い病気ですが、稀に重篤な合併症を引き起こすことがあるため、経過中に注意すべき症状の変化を理解しておくことが大切です。特に、乳幼児や成人、免疫力が低下している人は、合併症のリスクが高いと言われています。最も一般的な合併症の一つが、皮膚の二次的な細菌感染です。水疱を掻き壊した傷口から、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌といった細菌が侵入し、化膿してしまうことがあります。代表的なものに「とびひ(伝染性膿痂疹)」や「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」があり、発熱や強い痛みを伴うこともあります。次に注意すべきは、肺炎です。水痘・帯状疱疹ウイルスそのものが肺に炎症を引き起こす「水痘肺炎」は、特に成人や免疫不全者に起こりやすく、咳や呼吸困難、胸痛といった症状が現れます。重症化すると呼吸不全に至ることもあるため、早期の治療が必要です。また、稀ではありますが、中枢神経系の合併症として、「小脳失調」や「脳炎」、「髄膜炎」などが報告されています。小脳失調は、ふらつきや歩行障害、ろれつが回らないといった症状が現れます。脳炎や髄膜炎は、高熱や激しい頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんといった重篤な症状を引き起こし、後遺症を残すこともあります。その他、肝炎や血小板減少性紫斑病、ライ症候群(アスピリンの使用との関連が指摘される重篤な脳症)といった合併症も、非常に稀ですが起こり得ます。これらの合併症のサインを見逃さないためには、水疱瘡の経過中に、以下のような症状が現れたら、速やかに医療機関を受診することが重要です。高熱が続く、ぐったりして元気がない、呼吸が苦しそう、咳がひどい、激しい頭痛や嘔吐がある、けいれんを起こした、意識がおかしい、ふらついて歩けない、皮膚の赤みや腫れ、痛みが強い、膿が出るなどです。自己判断せずに、早期に医師の診察を受けることが、重症化を防ぐために最も大切です。
水疱瘡の合併症、注意すべき経過中の変化